それは10年近く前のことだ。とてもよくしてくださるドクターHと友人Kとで食事会をしていたときのこと。ドクターHが唐突に「仲山君、おしっこするとき、緑色のドロドロみたいなの出ることない?」憩室炎を患っている僕のことを気遣ってくれた発言だった。ん?あるある、あまり気にしていなかったけど。
「それね、憩室炎と膀胱がくっついてしまうことで起きることだから気を付けた方がいいよ」。
そうは言うけど、どう気を付けてよいかわからない。憩室炎に関してはかなりひどかったけど、よくなるものじゃないしな、、、とやり過ごしてしまった。
そして10年近く日々痛む憩室炎をだましだまし過ごしてきた今年の8月。明らかに尿に便らしきものがポツポツと混じっていることに気づいた。。。いや、正直に言えばもっと前から気づいていたけど、自分で否定してきただけだ。僕のは違うと。
しかし現実を直視しなければならないほどその映像はひどく、どす黒い尿の中に便の塊が混じって噴出されているのだ。尿道の激しい痛みとともにその衝撃映像に「うーーっ!!」と一人トイレで呻く。
ある日などはおしっこと共に数日前に食したラーメンの中の「メンマ」が出てきたことがあった。おしっこの出口からメンマだよ、これは痛むどころの話ではなく、衝撃的なその絵に絶望を覚えた(そのうちに笑い話になればいいけど)。
ご存知だろうか「グリーンマイル」という感動映画で主人公の一人・看守のエッジコム主任が、膀胱炎を患いながらおしっこをするシーン。エッジコム主任曰わく「カミソリを出しているかのような痛みだ」というセリフとともに、ある晩では痛みで脂汗をかきながら苦渋に溢れた表情でおしっこをしながら膝をつくあのシーンを。
それぐらい痛い。ジンジンと痛む尿道を抱え、大汗をかきながらヨロヨロと立ち尽くす(痛すぎてすぐに座れないのだ)。
その後すぐに文献を読み漁り、「大腸膀胱瘻」という疾患であること、これは手術以外に治す方法がないこと。それらを看護師たる奥さんにも正直に告白した。
8月2日(土)近所の泌尿器科を受診し、やはりこの疾患であることが確定。すぐに他院を紹介してもらったのだけど、紆余曲折の末、先ほどのドクターHに相談・ご紹介していただいた順天堂大学医学部附属順天堂医院にお世話になることとした。
*参考までに憩室炎で定期的に通院していた東京女****のドクターからは「水を飲んでおけばいい」と一蹴、吐き捨てられた。
毎日ガブガブ水を飲んで便で常に汚染されている膀胱をキレイにしておくことは理屈上は理解できるけど、ヘタをすれば腎臓に影響も出るこの疾患を「水飲んでおけ」はないよと、心底がっかりした。この病院のこのドクターさんには二度とお世話になりたくないと思ったわけです。
その後は順天堂医院さんであれよあれよという間に検査漬けの日々、この世のすべての病院検査をこなしたんじゃないかと思うほど検査に明け暮れた(心臓も患っているので慎重になって下さったのだと思う)。
そして手術日まであと数日となった今日、メンタルは穏やかでない。
大腸肛門科の主治医のドクターが「この手術、大変なんだよね。1日がかりになるから。他の科の協力も仰ぐしね」
あ~この手術って大変なんだ。全身麻酔なんてしたことないし。それに大腸切除は物理的にわかるけど、穴の開いてしまった膀胱はどうするんだ?(よもやヌイヌイ!とかするわけじゃないだろうし)
術後も色々あることは覚悟している、おそらく僕はオストメイトになるのだろう。
主治医の先生が言う。「このことを事前に了解・覚悟してくれると僕らも安心して執刀できるんだ。」と。
別にオストメイトになりたくてなるわけじゃないけど、覚悟を決めなければなるまい。だって手術後に自分のおなかを見て絶望したくないもん。ある日このことを想像しすぎて奥さんの前で不覚にも涙がこぼれてしまった(情けない)。
世の中にはたくさんのオストメイトの方がいる。僕よりももっと重篤な方もいるだろう。それでも五体満足だった自身が機能的に変わってしまうことを受け入れるにはまだ時間が必要だと思う。
信頼するドクターHも今日「術後は何かと不自由だけど頑張れ」とメッセージをくれた。
奥さんはこのオペ+入院生活を前向きに応援・支えてくれている。
これからの闘病生活と変わりゆく自身の日々を書き記そうと思った。
同じ疾患を抱えている人の目安になればと思う。